助けが来るまでがんばるぞい! 「老ヴォールの惑星」 小川一水 【小説レビュー】

2017年11月5日

やっぱり宇宙人とか絶対居るよね~度:★★★★☆
kundle版 2015.05.31 購入、2017.07初旬 読了

なんかSFとか読みてえ!などと思って、妙でかっこいいメカの表紙に惹かれて購入した本。
でも買ったことに満足して2年以上積んでいた。

この本は小川一水氏の、初の中編集とのこと。
そして星雲賞とかいろいろ受賞しているらしい。
まあ受賞歴とかおもしろいかどうかにはあまり関係しないものだが、この本はとても面白かった。

本作には以下のセンス・オブ・ワンダー(死語じゃないよね?)に満ちた4編が収録されている。

 

「ギャルナフカの迷宮」

暗い全体主義的な未来?のとある国。早い話が「1984年」的な世界。
その国での政治犯は暗い地下迷宮に送られ、サバイバル生活を余儀なくされる。
最初に人間性を、最後には命を奪われる囚人たち。
その場所で主人公の戦いが始まる!、みたいな。
こんな迷宮を作るくらいならば普通に刑務所作ったほうが……などとは言ってはいけない。
主人公のサバイバルの方向性が、僕としては意外な方に進むのが面白かった。

 

「老ヴォールの惑星」

SFマガジン読者賞受賞作。
表紙の変かっこいいメカが実は異星人そのものだったということに、ここで気づく。
恒星に近すぎて自転もままならないほどの惑星サラーハ。
とてつもない熱風びゅーびゅーで超臨界水の海しかない世界に、ケイ素や水晶などの鉱物由来の生命体が進化していた。
彼らは身体表面の水晶レンズを駆使して宇宙を観測することにより、驚くべき知性を獲得していた。
また高密度な光通信により、個人の知識や経験は他者にほぼ完璧に伝達することが出来た。
故に彼らは死を恐れなかった。
共食いの文化(それは種族が生き延びるための必然だったが)も持っていたと言うのに。
恐れたのは、何も残さずに死ぬこと。
だが観測により種族全体の死が予測され……。

やはり人間とはぜんぜん違う異星人の話は面白い。
面白くするためには、作者には相当な力量(想像力&説得力&筆力)が必要となるはずだが、小川一水氏の場合は問題なかったようだ。
生と死、種族と個体、そして知性とは何かを問いかける力作だった。

 

「幸せになる箱庭」

人類 vs. 異星人。
とはいっても実力差が有りすぎて戦争にならない。
それどころか侵略されていることにも気づかない。
そもそも侵略というレベルですら無い。
でも気づいてしまったから若者は抗う。
だって彼女とかいるんで、がんばんねえとな!

最後の一文はちょっと違うけど、まあこんなお話。

「現実でがんばっていこうよ」対「非現実でも幸せならいいじゃない」

とも言えるか。
あれ、こう書くと後者につきたくなるな……
やっぱり二次元最高(違)

 

「漂った男」

第37回星雲賞日本短編部門受賞。
海しか無い惑星に不時着した宇宙戦闘機パイロット。
なにせマジで海しか無いし空に星も見えないし位置を発信する機械とか全部沈んちゃったしどうしよう……。
あれ、でもこの海水飲めるぞ。しかも栄養たっぷりだ。温度も丁度いい。
手元にあるのはどこでも万能通信機Uフォン。宇宙の果まで通信できるよ。でも位置特定は出来ないんだよ……。
これがあるから寂しさもちょっとは紛れるってもの。

さあ助けが来るまでがんばるぞい!

みたいな感じでひたすら漂う男の話し。
それはもうただひたすら延々と漂うのである。身体とかしわしわになりそう、なんてレベルでなくいろいろ退化?してしまうほど。
果たして彼の運命は?

僅かな、あるんだかないんだかわからないほと薄い希望ほど残酷なものはないというお話、かもしれない。
あるいは、男の友情>新婚の奥さん?
生き延びられる環境設定などそこかしこに都合の良すぎる面がちょっと目立つけど、まあそれは仕方がない。
読むとちょっと海に行くのが怖くなるかも。
内陸の盆地に住む僕にはもともと怖い所なんだけど。

Amazonの小川一水氏のページ

 

 

老ヴォールの惑星

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