2014/9/2に第1巻、2015/5/30に第2巻を購入。
とある居酒屋で、三十七歳のツキコさんは、ビールの肴にと、まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょうなどを頼む。すると隣りでも同じように注文する老人が……。さても肴の趣味の合うご老体だと感心していると、その人は高校時代の恩師だと知る。この再会をきっかけに二人は、やがてゆるやかでおだやかで切なくてはかない二人へと深まってゆく……。
一人でいる時間は、充実した、静かで救われた時間である
……でも二人も悪くないよね。
その一人の素晴らしさを知っている者同士であれば、なおさら。
こんなお話の、原作は小説のマンガです。
このマンガを「黄昏流星群」みたいな熟年カップルラブコメと見るか、あるいは酒飲み&グルメマンガと見るかは自由ですが、僕としてはこういうイメージを持ちました。
同じ価値観を持つ者同士が次第に惹かれ合っていく物語には、単なる恋愛モノと称するにはもったいないと思えるほどの深い情感が漂っています。
また作画があの谷口ジロー氏ということで、本作で描かれる飲酒や食事の描写はこの業界の最高峰とも言える素晴らしい出来で、その意味では最上級のグルメマンガとも言えます。
孤独の価値
でも僕には、「孤独」というテーマが頭に浮かんで離れませんでした。
当然、ネガティブな意味での孤独ではありません。
こちらの記事でも書いた通り、創造的な意味での孤独です。
寂しいことは良いこと 「孤独の価値」 森博嗣 【一般書籍レビュー】
これをソロ充とかぼっち充などと称するととたんに低俗っぽくというか卑屈っぽくというかオタクっぽくなるのがちょっとアレですが、意味合い的には間違っていません。
そう、一人でいることはけして悪いことではなく、むしろ人生においては必要な要素なのです。
ただしこれは複数でいること、仲間でワイワイガヤガヤと楽しむことを否定するものではけしてありません。
孤独も、そうでないことも、どちらも素晴らしい価値があるということを認めましょう、ということです。
そしてそんな価値観を共有するもの同士が集れたら、それはまさに最上級の幸せ。
お一人様も最高。同じようにお二人様も最高。
とはいうものの一度お二人様になってしまうと、お一人様に戻るのが恐ろしく感じられてしまうというものまた人間。
この物語はラストに向かって、ほぼ予想通り、いや読者の期待通りに展開していきます。
その大団円も。
しかし最後の一話で実に静かに救われます。
これが余韻というものか。
マンガでこれが味わえる作品がどれだけ有るでしょうか。
ということで、単なる熟年ラブコメでもグルメマンガでもない、超有名作「孤独のグルメ」(まあこっちはどっちかというとギャグマンガみたいなものですが。笑)に負けずとも劣らぬ味わい深い名作です。
お酒を片手に、ぜひどうぞ。
そう、ギムレットには早すぎる。でもビールには遅すぎる。
そして呟くのさ。「エサヒィスープゥードゥラァァァーイ」(台無し
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